本の目次の作り方【出版社をやってみて分かった「本と企画のつくり方」】
【第7回】この連載では、本Webサイト「biblion」も運営している出版社(株式会社masterpeaceと申します)でこれまで100冊ほどの書籍企画・編集・発行をお手伝いさせていただいた筆者(代表兼編集者をやっております)が、自社でお手伝いさせていただいた企画やプロジェクトの経験からお伝えできる範囲で「シンプルな本づくりのポイント」をお話させていただきます。
前回までは、テーマの絞り方と本を手に取ってもらうためのアプローチ、本づくりの流れとスケジュール、お金の話についてお伝えしてきました。
今回の記事では、目次の作り方についてご紹介します。
1.目次=本の構成
2.目次の構成例
3.目次作りの進め方
4.目次作りのポイント
目次=本の構成
本を作るとき、最初に取り掛かることが目次作りです。
目次を考えるということは、全体の構成を考えるということです。
目次とは原稿作成における羅針盤のようなものです。「こんなテーマで本を書きたい!」と思っていても、目次(=構成)を事前にしっかり整理しておかないと、今書いているページではどこまでを説明するべきなのかが分からなくなることが多くあります。
結果、執筆が止まってしまったり、何度も同じようなことを書いてわかりづらくなってしまったりといったことになりかねません。最初に目次を考え、本の全体の構成がイメージできていれば、原稿の執筆はとても進めやすくなります。
目次は本作りにおいてとても重要な役割を果たしますが、最初から完璧な目次を作ろうとする必要はありません。原稿を書きはじめてみないとわからないことも多いからです。
「まずはこういうことを言わなくてはいけないな」「こういう内容も伝えたいな」といったように、頭の中にあるアイデアを書き出してみましょう。
実際に執筆を始めると、「この部分は不要だったな」「ここは最初に持ってきた方が流れがよくなるな」といった気づきがたくさん出てきますが、後から目次自体も修正して完成度を高めていけばよいでしょう。
目次の構成例
本の構成には基本的なパターンがあります。
大きく分けると「前付(「はじめに」など)」⇒「目次」⇒「本編」⇒「後付(「おわりに」など)」となることが多いのではないでしょうか。
「はじめに」は、内容に入る前の導入として、読者に本を読む心構えを伝える重要な役割を担っています。
たとえば「本書が誰に向けたものか」「どういう内容か」「本書を読むことでどういうことが学べるか」なども含めておくと、読者がより本文に入り込みやすくなるのではないでしょうか。
「おわりに」は、書籍を読み終えた方に向けたメッセージと考えてもよいでしょう。「おわりに」として本全体をまとめることで、読後感が良くなり、一冊の本として締まった仕上がりにできます。「最後まで読んでくれた読者への感謝」「制作にあたっての謝辞」「これからの広がり・展望」などが書かれることが多いですが、必ずこう書かねばならないという決まりはありません。
「はじめに」「おわりに」以外にも「参考資料」や「年表」「参考写真」などを付けることもあります。
肝心の「本編」の構成を考えるにあたっては、「章/節」と「見出し」についてお伝えしておきましょう。
「章」は、書籍をテーマで大きく区切る役割を持ちます。「節」は、章をさらに細かく区切るものです。
次の目次案は、本連載の企画段階の目次です。1章の中には、5つの節が登場していますね。章や節を適切に設けることで、著者は書くべきことが明確になり、読者は何について書かれているかをわかりやすく理解することができます。
目次の作り方には様々な方法がありますが、私がお手伝いする場合は「まずは伝えたい内容を章/節を考えずにひたすら書き出す」ようにしています。ある程度、伝えたい内容が出尽くしたところで、客観的にそれぞれの伝えたい内容をグループ分けして、何もしらない初見の読者にとっても混乱しないように注意しながら、順番を整理して目次を完成させていきます。
この整理をするときに「章/節」を意識すると、ある章だけが情報のレベルが深くなりすぎたり、ある章だけはあっさりしたバランスの悪さが目立つといったことを避けられます。
次に「見出し」についてお伝えします。
一番大きな見出しは「扉」と呼ばれます。
次の図では「第1章 数字は使わない!イメージで財務諸表を理解する~」という章のはじまりが扉として構成されています。
扉は、1ページ全面を使って見出しを表現するもので、本の中で大きく内容を区切って見せることができます。
続く次の図では「大見出し」「中見出し」が並んでいます。
先ほどの「章/節」でいうと、この図の中で「大見出し」としている見出しが「節」を表しています。
見出しは大見出し>中見出し>小見出し>さらに小さな見出し、とレベルを深く設定することができますが、本全体である程度見出しのレベルを揃えたほうが読みやすくなります。
とある章だけ、見出しが深く設定されているが、次の章では大見出ししか使わない、といったことにならないように、原稿を書き出す際にどのレベルの見出しまでを使うかある程度検討したうえで原稿執筆を進めると後での編集・整理がスムーズです。
目次作りの進め方
先ほどもお伝えしたように、まずは、章や見出しの整理は考えずに、伝えたい内容を箇条書きでどんどん書きだすことをお勧めします。ある程度書き出したあとで、内容やボリューム、順番を考えながらグループ分けと整理をすることで「章分け」ができます。
なお、伝えたい内容をを書き出すときに、文章として整える必要はありません。具体的にどういうことを書きたいのかを考えながら、自身にとってわかりやすく書くことが大切です。執筆を進めながら、見出し構成も精査できますので、まずはペンを動かし始めましょう。
この時点では、それぞれの章や見出しがどの程度の文字量になるかまでは細かく考えなくても問題ありません。雑誌などでは、ページ数や文字量が厳密に決められていますが、自著をこれから作ろうといった企画であれば、まずは「何を伝えたいか」に集中して目次づくりを進めましょう。
さて、目次作りを終えたら、一晩寝かして再度推敲しましょう。時間をあけて冷静な目線で、書き出した目次で言いたいことが伝わるのか、流れがスムーズか、抜けている要素がないかを確認するとよいでしょう。(編集者と一緒に本づくりを進めている場合は、このタイミングで内容や順番について議論されることをおすすめします)
目次作りのポイント
目次作りの段階で、精度にこだわって長い時間をかける必要はありません。書籍全体のイメージがある程度ついたら、まずは原稿を書き出してみましょう。
原稿を書き進めたら、章としてのボリュームのバランスを見てみます。極端に長すぎる、または短すぎる章があれば、構成を調整してバランスをとる必要があります。例えばですが、長すぎる章は内容を分割することができないか、短すぎる章は別の章に含めることができないかなどを考え、ボリュームを整えます。
構成も文字量も、後で調整できますので、最初から完成品を作ろうと気負わず、まずは手を動かしてみることが、効率よく原稿を完成させることにつながります。
今回は、目次作りについてお話しました。次回は、タイトルの決め方についてご紹介します。
0コメント